就業規則の重要項目(10)~「採用」不適切な質問や書類に注意!公正な採用選考を進めるポイント~

札幌市・石狩市・当別町を中心に、地域の中小企業や個人事業主の皆さまの労務管理をサポートしている「社会保険労務士なかじま事務所」です。

就業規則の整備から社会保険手続き、給与計算、助成金申請まで幅広くご支援するなかで、今回は「採用」の3回目となる「公正な採用選考を行うためのポイント」について解説します。

貴社が従来より行なっていた採用方法でも、現代では不適切となっているかもしれません。もし、従来の選考方法でずっと行なっている中小企業は、あとで大きなリスクになりかねないです。

特に昔から採用選考が変わっていない中小企業は、今一度読んでみてください。

1. 「公正な採用選考」とは?

公正な採用選考とは、家族状況や生活環境など、応募者本人の適性・能力に関係のない事柄で採否を決定しないことです。

採用側が「採用の合否に影響させないつもり」で質問や書類記入を求めたとしても、情報を把握した時点で結果的に採否へ影響を与えてしまうおそれがあります。

これは就職差別につながるリスクがあるため、適性・能力に関係のない事項はそもそも把握しないことが重要です。

個人情報保護と関係法令の留意点

職業安定法第5条の4および平成11年告示第141号に基づき、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報の収集は原則として認められていません。

注記:これらの法令に記載されている「労働者の募集を行う者」には、求人を行う事業主も含まれます。

2. 応募用紙・エントリーシート設定時の注意点

応募書類の様式については、応募者の区分に応じて以下の標準的な書類・様式を使用することが推奨されています。

  • 新規中卒者:「職業相談票(乙)」
  • 新規高卒者:「全国高等学校統一応募書類」
  • 新規大卒者:「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例」または「JIS規格の様式例に基づいた履歴書」
  • 一般(中途等):「JIS規格の様式例に基づいた履歴書」

自社独自で応募用紙やWeb上のエントリーシートの項目・様式を設定する場合は、応募者の適性と能力に関係のない事項(家族の職業、尊敬する人物、宗教・信条など)を含めないよう十分留意しましょう。

3. 面接時に配慮すべきポイント

面接を行う際は、職務遂行に必要な適性・能力を客観的に評価できるよう、事前の準備と姿勢が大切です。

  • 事前準備:あらかじめ質問項目や評価基準を定めておき、関係のない質問をしないルールを徹底する
  • 基本姿勢:応募者の基本人権を尊重し、潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨む
  • 評価方法:主観を排除し、できるだけ客観的かつ公平な評価を行う

3-1. 採用選考の基本原則との照合

厚生労働省では事業主が採用選考を行う際の大原則として、次の2点を定めています。

  1. 応募者の基本的人権を尊重すること
  2. 応募者の適性・能力のみを基準として不採用を決めること

 家族構成や家族の職業・収入などは、「応募者本人の責任や努力ではどうにもできない事柄(本人の適性・能力とは関係がない事項)」に該当します。これを選考材料にしたり、選考の場で把握しようとしたりすることは、適正な選考を阻害するおそれがあります。

3-2. 「アンケート」と称して取得することの問題点

形式的に「面接質問」ではなく「アンケート」「アンケート用紙」「身上書」などの名称を用いたとしても、採用選考の一環として情報を提出させる以上、実質的な選考プロセス・情報収集行為とみなされます。

手法を「アンケート」に変えたとしても、収集している項目自体が不適切であるため、面接時の口頭質問と同様に配慮を欠いた不適切な情報収集と判断されます。

3-3. 厚生労働省が示している「配慮すべき事項(把握すべきでない事項)」

厚生労働省「公正な採用選考の基本」では、面接やエントリーシート等で把握してはならない(あるいは配慮すべき)具体例として以下を明確に挙げています。

  • 本人に責任のない事項の把握
    • 家族の職業、続柄、健康状態、資産状況、収入など
    • 家族構成、本籍・出身地、住環境(住宅の種類・間取り等)
  • 本来自由であるべき事項(思想・信条等)の把握
    • 宗教、支持政党、人生観・信条、愛読書・尊敬する人物など

表

項目分析内容
法的・倫理的判断厚生労働省が推進する「公正な採用選考」の趣旨に反する不適切な行為
面接手法評価「アンケート」という形式を用いても不適切な項目の収集であることに変わりはなく、選考上の正当性は認められない
企業側のリスクハローワーク等からの行政指導(指導・助言・勧告)の対象となるリスクのほか、応募者からの不審感・SNS等でのレピュテーションリスクを招く

※厚生労働省「公正な採用選考の基本」を参考に筆者が独自にまとめた

3-4.企業・面接官側の適切な対応

採用選考において確認が許されるのは、「応募者が職務を遂行するための適性・能力・意欲があるか」という点のみです。以下に選考時に関係のない事柄を掲載します。社内で採用時の面接担当となった方は、十分にご注意ください。

  • 職務に関連する質問への絞り込み:スキル、実務経験、就労条件(勤務地・シフト・残業の可否など)に絞って確認を行う。
  • 身上届の提出時期の見直し:家族手当の適用や緊急連絡先の把握等で家族情報の取得が必要な場合であっても、それは「採用内定後」または「入社手続き時」に行うべきであり、選考段階での取得は避ける必要があります。

4. 多様性(ダイバーシティ)の尊重と予断・偏見の排除

採用選考においては、特定の属性を持つ人をあらかじめ排除しないことが重要です。

  • 障害のある方
  • 難病のある方
  • LGBTQ等の性的マイノリティの方(性的指向および性自認に基づく配慮)

特定の対象を排除してしまう背景には、無意識の予断や偏見が大きく作用しています。

当事者が不当な扱いを受けることのないよう理解を深め、公平な選考を徹底しましょう。


まとめ|適切な採用選考でトラブルを防ぎましょう

公正な採用選考を行うことは、求職者の権利を守るだけでなく、企業にとっても「ミスマッチの防止」や「企業の社会的信頼の向上」につながる大切な取り組みです。

過去のテンプレートを今でも使用し続けていると、現代では問題となるケースが多々あります。今すぐにでも貴社の選考過程について見直しをしていくことをオススメします。

  • 本人の適性・能力に関係のない情報は収集しない
  • 適切な応募用紙・様式を使用する
  • 面接での質問項目・評価基準を事前に定めておく

引用

厚生労働省「公正な採用選考の基本」

(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_56780.html)

新潟労働局 職業安定部 新潟ワークナビ「基本的な考え方とチェックポイント」

(https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-hellowork/jigyounushi/kousei_saiyou/check.html)


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